


【最終回】高専からアメリカの大学に編入した話。

長岡高専生が作る新しい就活の形。オンラインインターンコンテストとは??

自分の就職先を考えたとき、どのように会社を選びますか?やりたいこと、給料、福利厚生、立地など、いろいろな考え方があると思います。その選び方に良し悪しはなく、自分が満足できる選び方をするのが一番です。
自分の専門領域が好きでも、その仕事で一生働くのは何か違うな。と考えたことはありませんか?
生物は大好き。でも就職先に生命保険会社の総合職を選んだ暁見さん(仮名)に、その選択の理由をお伺いしました。
暁見さんは高専から編入した岡山大学から、保険会社の総合職に就職を決めていますが、どうしてですか?
2つ理由があって、1つは有名企業で給料が高いことですね。
みんなが知っている企業に入りたかったという昔からの目標もありましたし、安定した生活を送りたいのでお給料が多くいただけるのは大事でした。
確かにそれは大事ですね。
もう1つの理由というのは…?
もう1つは、ビジネスをしているのもあって、お金の動きというのに興味が出てきたことですね。
保険会社というのは金融業界なので、お金の動きに多く関われるということは魅力的でした。
どんなビジネスをされているんですか?
バーの店長をしています。
元々アルバイトでバーテンダーをしていたんですけど、そこの店長が新しく店舗を開くときに、店長をやってみないかって言われて。
すごいですね。
元々自分がいたバーで、僕が企画を考案してやらせてもらったところ、売り上げがめちゃくちゃ上がったんですよね(笑)
そういうところに目をつけてくれた店長から声がかかった感じです。
なるほど。そこからお金周りのことに興味が出てきたんですね。
そうですね。
あとその店長をやらせてもらってるときに、自分って話せる人だなって気づいたんですよね。
話せる人、というのは…?
自分では普通だと思ってたんですけど、俗にいうコミュ力ってやつですかね。
店長をやらせてもらってるのもあって、いろんな人と話したり面接したりすることがあるんですけど、そこで、「もしかして僕ってコミュ力高いのかな?」と思う場面がよくあったんですよね。
確かに今初対面でお話させてもらってますけど、めちゃくちゃ話しやすいです。
ありがとうございます(笑)
この能力を活かさない手はないし、活かして誰かに貢献出来たら、それはうれしいことだなって思ったんですね。
だから企画営業のような職に向いているのかもと思い始めたのもここがきっかけですね。
バーという成功体験から、自分の適性に気づいたんですね。
そもそも暁見さんは高専で生物を専攻されていたそうですが、編入された岡山大学では何を勉強されているんですか?
大学でも生物を専攻しています。やっぱり僕は生物が好きで、今研究していることもとても楽しいです。
就職する際に生物の知識を活かして就職しようとは思わなかったんですか?
最初は思ってましたよ。
でも正直に言って、生物系で就職するとなるとあまり選択肢がなかったんですよね。
研究し続けていくにしても、あまりお金にならないことが多かったりして…(笑)
だから生物にこだわらずに就活をしました。
そうなんですね。
そんな事情、あまり知りませんでした。
これも、大学編入したから気づけたことで、高専にいたときは全く知りもしませんでした。
やっぱり大学に行くと情報の幅が広がったりするので、就職について考えたときに他業界を広く見ることができたことが大きかったですね。
そもそも、高専に入られたきっかけは何だったんですか?
僕は兵庫県の豊岡市という田舎出身なんです。
そこでは高校の学区制というのがあって、行ける高校が限られていたんですね。
でもその選択肢に縛られたくないと思っていた時に、高専を見つけたんです。
高専なら学区制にひっからないし、偏差値も高かったんで親も許してくれるだろうと思って。
地元から離れたかったんですか?
というよりも、親が「進学校に行け」という人で、親の言いなりになりたくなかったんですよね(笑)
もちろん田舎の閉鎖的な雰囲気にも抵抗はありました。
だから、寮に住めるのも決め手の1つでしたね。
専攻する専門分野はどうやって決められたんですか?
昔から生物が好きだったんですよね。
オープンキャンパスで高専の先生に、ガンガン生物の勉強できるよ!って言われて、ワクワクして入学しました。
ふたを開けてみれば9割が化学の勉強でしたけどね(笑)
高専あるあるですね(笑)
入学前に期待してたことがほとんどできないやつですね。
そうそう。結構そういう人いると思うんですよね。それでミスマッチも増えてる気がします。
高専入学したときには、生物分野で就職しようと考えていたんですか?
ぼんやりと考えてはいましたが、はっきり決めていたわけではありません。編入するかどうかも決めていませんでしたし。
高専ってすぐに自分の専門分野を決めちゃうので、進路選択の幅が狭まるなぁとかは考えませんでしたか?
それはなかったですね。
逆に田舎の高校へ進学するよりも進路選択の幅は広がると思ってました。
5年間専門に触れた後に進学するか選べるので、受験勉強を3年間するよりもいいのかなって考えました。
専門分野を学んだからと言って、それを活かさなければいけないとは考えなかったんですね。
そうですね。そのあたりは柔軟に考えていました。
むしろ大学に行ってしまえば、どうにでもなると思ってました。
今の大学って、就職支援学校みたいな雰囲気があるじゃないですか。
たしかにそうですね。
実際に大学に行くと視野は広くなりますし、「高専卒」ではなく「大卒」のカードが使えるので就活でも自由がききます。
高専の推薦就職はとても魅力的なので上手に使うべきだとは思いますけど、大学に行くことで得られたことも多くあったので、編入してよかったですね。
今進路に迷っている高専生に向けて、なにかアドバイスをいただけますか?
悩んでいるっていうことは、自分が専攻しているものを一生の職にするかどうかで悩んでいるんですよね?
でしたら編入した方がいいと思います。
大学に行くだけで進路の決め方に大きな幅ができますし、環境が変われば自分の好きなことに出会えるかもしれませんし。
僕も大学に行くことで自分の興味分野が見つかりましたし、とりあえず編入という選択もありだと思います。
高専生なら自分の専門を活かせる職につくべき!という意見もありますが、それについてはどう思いますか?
もちろん、自分が学んできたことを活かそうとする姿勢は素晴らしいことだと思いますし、推薦システムを使って就職するのは賢い選択でもあると思います。
でもその進路に疑問を持ってしまったのならとことん考えて行動するべきです。
僕の高専時代の知り合いにも、医学部へ行った人、起業した人、文転した人はいますし、高専に来たからといって進路の幅を狭めてしまうのはもったいないと思います。
進路を決めるときに周りに流されることは悪いことではありません。もうルートが確立しているので、難易度は高くないですし。
でも自分が違うと思うなら、行動しなければいけない。これにはエネルギーが要ります。でも頑張らなければ何も見つけられないと思います。
頑張らずに「なんか違うんだよなぁ」と言うのはただのエゴなので、言う資格はないと思います。何事も「頑張ってから」ですから。
暁見さんは文系職に就かれましたが、理系であることでの不都合などはありましたか?
いや、ありませんね。
むしろ数字に強い理系は歓迎されました。
あと単純に珍しいのでおもしろがられますしね(笑)
ありがとうございました!
暁見さんは、自分の専門分野は好きでも、職にはしないという選択をしました。大事にしたのは、自分が目指す将来の「目標」です。
高専に縛られずに進路を考えるその姿勢は、自分の人生を大切にする、人本来の考え方だと感じました。
高専に行くと情報が偏って、進路についての間違った思い込みをしてしまうこともありますが、柔軟に考える暁見さんのその姿勢が参考になった人も多いのではないでしょうか?
最後に1つだけいいですか?
もちろん。何でしょう?
とにかく、後悔だけはしない選択をしてください。今の自分のベストの選択をしてください。
「楽な道が自分にいい道とは限らない」ということを頭に置きながら進路を考えてください。
取材・編集:若林拓海