進路に悩んでいる高専生にも悩んでいない高専生にも

きっかけは国語の教員の一言だった。高専生が大学教員を目指すまで

松江高専を卒業後、電通大に編入し現在電通大の教員である野村先生。

なぜ高専から大学に編入し大学の教員になったのか、またどのようにして研究の道を選んだのか。誰もが悩む就職か進学の選択で、就職を選ばず博士課程に進学した動機を先生にお伺いしてきました。

コンピュータに興味があり、先生の勧めで高専に

中学生でコンピュータなどに興味を持ち、プログラミングも触っていたそうです。そんなとき中学校の先生から、コンピュータに興味あるなら、と高専を紹介してもらったと言います。

「中学校の先生に感謝してますね。普通にしてたら中学からの進学先の選択肢として、高専はなかなか出てこないよね。もっと有名になってもいいとおもうけどね。」

高専時代は4年生まで寮にいたそうで、

「寮は15~20歳と年の離れた学生が住んでいるのでなかなか濃かったですね。20年前の寮なので厳しいところもあったと思うね。1年生は制服じゃないと外出できないとか。楽しかったですがもう戻りたいと思わないです(笑) 高専の寮って、あれだけコミュニケーションをとらないと成り立たないから珍しいよね。」

コミュニケーション能力など、寮で学んだことも多いと言います。

また高専の授業について、

「よくこれだけのことを板書だけで教えてくれたと思うね。編入してから、専門科目で目新しいことを学ぶことはほとんど無いと思う。つまり専門は高専でかなり教えてくれてたってことなんだね。僕は高専5年間は無駄じゃなかったと思うね。高専に来なかったら理工系の教員になってなさそうだからね。」

高専への入学がすでに人生のターニングポイントになっているのかもしれません。

メーカー志望のはずが、研究の道へ

10年以上、大学教員をしている先生ですが、高専3年生までコンピュータなどのメーカーへの就職を考えていたと言います。でもあるとき教育の道の話を聞いたことで、教員という職に興味を持ったそうです。

国語の先生に、『会社とは違って、利益を追求しない職業が、教員なんだ』と言われて興味を持ったんだね。その話を聞かなかったら大学に編入してたとしても、教員になろうとは考えなかったんじゃないかなって思う。未だに国語の教員の話は印象に残ってるね。」

それでも編入試験を受けるときには、教員という職業に興味があるだけで、明確には研究者や教員になりたいとは考えてなかったそうです。
大学院に進学して、修士で卒業してメーカーに就職しようとも思っていたようです。

「どこからかというと、大学の学部4年時の卒研の先生が研究者肌だったのと、同じ研究室に博士課程の人が居たのが大きいね。このような研究を一生できるなら楽しいだろうなって思ったね。身近にそのような修士課程や博士課程の人がいたので、修士に進むことを決めました。でも僕も修士2年の時に博士課程に進学するか、就職をするか悩んだよ。でも最後に博士に進学するのは”えいやあ”という感じだったんだけどね(笑)

野村先生が学生時代の研究の様子

結局、修士2年の5月ころ、就職活動が始まる前に博士課程に進むことを決めたそうです。

「確かに博士課程に進むときに不安はあったね。学位を取れるのか、就職出来るのか、まぁでもそこは成るように成るのかなと思ってました。メーカーなどの企業だと自分のやりたいことではなく、会社に言われた研究になってしまう。自分のやりたい研究をしたいという気持ちがあったので進学しました。就職を選ばなかったというより、博士課程以外の道が見えてなかったというのが大きいんじゃないのかな。修士まではそれこそメーカーとかの就職を考えていたけど、その後の博士課程では、研究者になるんだろうなと思っていましたね。」

その当時は、博士を卒業した後は、研究者になる道しかほとんど無い時代だったようです。そして博士課程での就職の時は、

研究者を目指して公募で10箇所ほど受けたんだけど、すべて落ちました(笑) 結局、大学教員には紹介でなったんだよね。でもある意味うまくいったと思います。博士で学位を取れたり、就職するのって、その人の能力もそうなんだけど、半分以上が運なんだと思うんだよね。周りがどれだけその人を活かしてくれたか、あとタイミングがいいかだよね。」

教員になれたのも周りに恵まれたからだと語ります。印象的だったのは、運が良かったということを何度も話していたことでした。

「就職のときも、たまたまお世話になった先生のお知合いが、計算機を使える人を探してたのもタイミングが良かった。大学教員になりたかったのって、研究を続けたかったからなんだよね。だから大学などの教員のなかには、教育というより研究をしたかった人が多いと思うんだよね(笑)」

ほかにも会社で働いていた人が教授になるパターンもあるようで、ただ非常勤講師としての職務経験などの、教育の経験が求められることが多いそうです。

実際の大学の教員の仕事内容では、研究とは関係ない雑務も少なくないと言います。しかし教員のメリットも教えてくれました。

大学の教員の方が自由度が大きいね。何かすごい発明したいとか名前を残したいっていうよりは、自分の好きな研究、自分の持ってるアイディアの実現をしたかったんだよね。子どもの工作と一緒だよね。自分の頭の中で思ってることを実現したいっていう。」

自分の職を決めるというのは、人生において最も大きい決断の一つだと思います。
野村先生は、自分の将来をイメージし、自分のやりたいことに真剣に目を向けたからこそ、大学の教員という職に就く決心ができたのだと思います。
ほかの職とは違い、独特な文化や環境になりますが、自分自身のやりたいことがそこにあるなら、教員を目指すべきかもしれません。

野村先生に大学教員の実情についてもお聞きしたので、そちらは以下の記事でどうぞ!


野村先生の経歴や研究内容はこちらからどうぞ。


取材・執筆:加藤桃子
編集:若林拓海

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