進路に悩んでいる高専生にも悩んでいない高専生にも

全国高専交流会in仙台2019に参加してきました。~後編~

この記事は後編です。ぜひ前編をお読みになってからどうぞ。


レクチャーアワーの後に行われたのは、最近高専を卒業された先輩方、または現役高専生によるヤングセッションです。

開会のあいさつを行ったのは、鈴鹿高専卒でフラー株式会社人事・採用責任者の川野晃太さん。川野さんを含め、フラー代表の二人は高専の卒業生。会社の理念や現在行っている事業のほかに、高専とのつながりも話してくださいました。

次に、同じくフラー株式会社代表取締役CCOの櫻井裕基さんの講演がありました。ここでは、「卒業して10年、今だからこそ想う高専の可能性」と題して、編入・起業をした際にそれぞれ感じた高専の強みや他との差が紹介されました。

櫻井さんは長岡高専を卒業した後、千葉大学デザイン工学科に編入しました。そこでは、女子の圧倒的な多さや、グループワークの頻度に高専との異なりを感じたそうです。また、高専では、技術→モノ→人であるのに対し、千葉大学では人→モノ→技術というようにモノづくりの考え方が全く違うともお話ししていました。
起業してからは、どこの会社でもアプリやITが非常に多く活用されるため、技術的視点が欠かせないことを知ったそうです。それに対する高専の技術力の高さについてお話していました。
これらすべて、高専の中にいるだけでは気づけないこと。ぜひ、さまざまな高専の良いところを有効活用していきたいです。



次に行われたのは、「高専起業家から見た高専の価値」をテーマとしたパネルディスカッション1。

ファシリテーター:菅野流飛(株)高専キャリア教育研究所代表(東京高専)
パネラー:櫻井裕基 フラー(株)代表取締役CCO(長岡高専)
              吉崎亮介(株)キカガク代表取締役社長(舞鶴高専)
              奥本 隼(株)Two Gate Co-Founder/CTO(長野高専)
              山崎泰晴(株)エニバ代表取締役CEO(仙台高専)

はじめに、起業した経緯についてのディスカッションが行われました。

2011年、福島県で震災を受けた山崎さん。これを機に、東北を盛り上げる企業を作りたいと思うようになったそうです。現在は一兆円企業を作ることを夢に掲げ、マーケティング事業や企業のYouTubeチャンネルの運営などを行っています。

「高専の仲間たちと続けていったら、いつの間にか大きくなり起業していた」と話すのは、Two Gate CTOの奥本さん。もともとは非常に慎重な気質で、ベンチャー企業にさえ行く気がなかったのに、未来はどうなるかわからないと笑ってお話しされていました。

吉崎さんは、現在の会社が2社目。1社目で出会った社長のように、自分もビジネスの中でたくさんの意思決定をしたいと思い、その会社を辞め起業することを決意しました。

櫻井さんは、高専の就職組から会社の愚痴を聞いたことをきっかけに、「何を作るかより、誰とつくるか」が大切であると感じたそうです。そのときに、長岡高専時代に出会った渋谷修太さんに誘われ、共に起業を志すようになりました。

最後に行われたディスカッションは、高専のメリットとデメリット。

山崎さんは、専門を学ぶことができる先生と環境に囲まれていることが高専の良さだといいます。反対に、社会経験のなさが大きなデメリットであると感じており、現在にも響いていると言っていました。

高専はコミュニティの結束力が明らかに強いと話すのは、奥本さん。しかし、高専生は何事も技術で解決しようとするところがあるため、人やお金などほかの要因を探ったり、見せ方の工夫をすべきだとお話しされていました。

吉崎さんは、高専生のとりあえずやってみようという楽観主義マインドが良さであるといいます。しかし、先ほど奥本さんが言ったように、見せ方やプレゼンの仕方が致命的であるようなので、ぜひそこを練習してほしいと伝えていました。

高専出身なだけで仲間だとなるような、圧倒的な一体感が良さだというのは、櫻井さん。逆に、デメリットは、井の中の蛙になってしまうことだそう。せめて、自分がどの池にいるのか、つまり自分がどの分野で活躍できるのかを知っておくべきだと言っていました。

これらのディスカッションを受けたファシリテーターの菅野さんは、「高専の良さとして多くあげられたのは、コミュニティの強さや、技術的な自信があるところ。その見せ方を改善するために、社会と接点を持ち、立ち位置やアプローチ法を学ぶべき」と、ディスカッションを締めくくりました。

私自身も、高専のコミュニティの結束力は、他に例を見ないほど強いものであると感じています。本イベントHNKも含め多くの団体がつながりあうことで、高専の弱みとされていた見せ方などを改善していき、強みである技術力の高さを社会に行き渡らせられればと思います。


パネルディスカッション1の後、学生LTが二件ありました。

一人目は宇部高専の有田伊吹さん。

高専を受験したときに感じた「高専の情報の少なさ」に焦点を当て、「高専塾」を始めたいというお話でした。まだ計画段階だそうですが、実現すれば、高専を目指す中学生への確かな情報源として、必要とされる物になると思います。
このあたりの課題感は高専マガジンに近いところがあり、共感しました。
アドバイスがほしいとのことでしたので、興味を持たれた方は連絡してみてはいかがでしょうか。



二人目は長岡高専の高橋知也さん。

「高専生による地方創生」というテーマでLTをされていました。地方×高専に可能性を感じ、地方と協力する大切さについて訴えるような内容でした。
確かに高専の活発な学生と地域を連携させることができれば、今までとは違う「地方創生の形」がみえてくるのではないかと感じました。



次にフレッシュ講演ということで、株式会社キカガクの代表取締役社長であり、舞鶴高専出身の吉崎亮介さんが「これからの教育エコシステムを考える」という講演をされました。

現代の教育者は、日中は仕事でいっぱい→新しいことを学ぶ時間がない→知識が時代遅れになる→給与が上がらない→最初に戻る、のサイクルに陥っているといいます。この負の連鎖を断ち切るためにキカガクが行ったことは、このサイクルの初めである「仕事の量を減らす」ことだそうです。そうすることで、仕事の割合を減らす→学ぶ時間を作る→能力が上がる→給料が増えるというサイクルになり、実際に会社はうまく回っているといいます。
教員のレベルも上がれば、生徒側もスキルアップしやすい環境が作られるので、このサイクルが実現できていることは、見習わなければいけない点かもしれません。
また、これは教育者だけではないと感じました。何事も最初の余裕を作らなければ、自分のスキルを新たにつけることはできません。



そして次のパネルディスカッション2のテーマは「高専出身者のキャリア」です。

ファシリテーター:茨木隆彰(株)ヘマタイト 代表取締役(神戸市立高専) 
パネラー:徳田周太 広告代理店 UI/UXデザイナー(石川高専)
     望月雄太(株)ヘマタイト エンジニア(木更津高専)
     中尾真一郎 VANANAZ SYSTEMS INC CEO(鹿児島高専)
     三宅佑磨 Supership(株)エンジニア(津山高専)

最初の方は、登壇者の皆さんが高専を目指した理由と高専でどんなことを学んだかについて話していました。

高専ってキャリアにどう影響したか?についてのトークが一番印象的でした。

とにかく手を早く動かすことを学べたのが高専だと語るのは、デザイナーの徳田さん。理論だけではなく、早い年代から実習を通して手を動かす経験が、仕事をするうえで活きているという実感があるようです。

エンジニアの望月さんは、ヘマタイトの社員として働きながら、学生として高専に在籍している方です。仕事で学んだことを学校で学びなおすことになるから、新しいことを学ぶには適していないといいます。ですが、工学の基礎を学ぶ環境や、学びたい人をサポートできる環境がそろっている点が、高専の良いところだそうです。

フィリピンでお仕事をされている中尾さんは、高専に助けてもらったといいます。人とずれてもいいという、自由な雰囲気が高専の良いところで、もっと高専生はチャレンジしたらいいというアドバイスも。海外に目を向けることも、これからのエンジニアには大事なことだといいます。

高専は変な人が多く、情報量が他と比べて大量に流れている環境だったと語るのは、エンジニアの三宅さんです。高専を活かすなら、興味を持ったことに挑戦することが必要だといいます。

皆さん口をそろえて言っていたのは、挑戦しろ。ということです。高専にはたくさんの挑戦ができる環境がそろっているので、それを活かさない手はない。自分がやりたいことに貪欲に取り組んでいく大事さを教えてくれました。

パネルディスカッションの後は浜野慶一さんによる、「天皇行幸町工場、浜野製作所からの高専教育への期待」というエール講演がありました。



その後、集合写真を撮影し、そのまま懇親夕食会へと突入します。

和やかな雰囲気で始まった懇親夕食会では、学生も社会人も関係なく交流することができました。初めは学生だからと緊張していましたが、 懇親夕食会が終わる頃にはすっかり馴染み、心配する必要なんてなかったなと感じました。

 懇親夕食会が終わるとコミュニケーションアワーが始まりました。

合計10人の誰が LT を行ってくれました。詳しいことは長くなってしまうので控えますが、どの方も高専に熱い思いを持っていることが伝わってきました。



その後各部屋に解散して、一泊。部屋が同じになった方と、夜遅くまで話をさせていただきました。

私たちは三重や愛知から来たので、翌日の朝には帰ることになりましたが、時間に余裕のある方は、そのまま仙台観光をしたそうです。


主催していただいた、ヒューマンネットワーク高専(HNK)の皆様、スポンサーの皆様、登壇された皆様、そして学生である私たちにも温かく話しかけてくださった皆様、本当にありがとうございました。

多くのものを学べた1日でしたし、とても楽しかったです。

学生の皆さんも、ぜひ参加してほしいイベントです。来年は新潟で開催できるように調整が進んでいるようですので、詳しくはこちらからご確認ください。


執筆:成田琴美(前半)
   若林拓海(後半)
編集:若林拓海

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