進路に悩んでいる高専生にも悩んでいない高専生にも

高専中退後、ふてくされて何もしなかった3年を経て、整備士の道へ。

飯尾 俊行

東京高専1年次中退。その後、3年の期間を経て、ホンダテクニカルカレッジ「国際自動車整備科(当時)」(現在は海外インターンシップコースに改名)に入学。ニュージーランドへの1年間の研修などを経験する。

3年次修了(国際科卒業)のタイミングで同校の「一級自動車研究開発学科」の3年次に編入。東京大学との合同プロジェクト(Team轟)を経験する。現在4年生。

高専に入ることが目的で、入ったあとはやる気が起きなかった。

中退されたということなんですが、高専には何年くらいいたんですか?

2年ですね。
1年生を2回して、2回目の1年生の時の1月にやめました。

中退したきっかけはなんだったんですか?

シンプルに勉強してなくてダメだったんです。
1年目の学年末の再試でも全然やる気が起きなくて。
75点満点で3点しか取れない。みたいな感じでした。

やる気が起きなかったのはなぜですか?

実は高専に入った理由が「父親に負けたくない」っていう理由なんです。
もともと中学の時に父親が嫌いすぎて。父親が高専を受けて落ちてたんですね。
僕が高専受けるって言ったら「絶対落ちる。」っていうんで、結果を出してやろうと思って、頑張って勉強して。結果、受かることができたんですよ。
こんな感じで高専に入ることが目的だったので、燃え尽きちゃったんです。

きっかけはネットの広告

今はホンダテクニカルカレッジに行かれてるということですが、高専と同じようなことをやられてるんですか??

全然違います。
きっかけもネットで偶然みた広告がきっかけだったんです。
広告をみて、「入っちゃうか。」って感じで入りましたね。

入ろうと思った理由はなんだったんですか?

高専を辞めて、2年くらい何もしてなかったんです。
バイトをちょろっとやったり、免許をとったりしてたくらいで。
当時はボルダリングの専門学校に入りたかったんですけど、反対されて。
ふてくされて艦これだったりFPSを毎日やってました。
でも2年くらい経つと、元クラスメイトの子たちが4年になって卒研とかやりだしたんですよ。他にもプロコンだとかで優勝したりとか。
周りが成果を出すのを見て、なんでこんなに差がついてるんだろう。って焦り出したんですね。
そんな時にたまたま広告でホンダテクニカルカレッジを見つけたんです。実際に見学に行くと、「ニュージーランドに行ける。」っていうのを知って、面白そうだなと思って入りました。

ニュージーランドに行きたいと思って入学されたんですか?

自分、適当な人間なんですよ。楽しければいいじゃんって感じなんです。
だから、「ニュージランド行けるの楽しそうじゃん。」っていう理由で入りました。
そんな感じで理由は適当だったんですけど、結果的には見え方が広がったので、海外に行けて良かったなと思います。

海外に行って気づいたこと、詳しく聞きたいです。 

いろんな選択肢があるんだ。ってことに気づきました。
もともと、楽しければいいじゃんって考えだったのでブラック企業的な考えが好きじゃなかったんです。
でも整備士って日本だと割とブラックな職業なんですね。だからこの先日本で生きていくならそういうのに慣れなくちゃいけないかなって思ってたんです。その場に合わせればいいやって考えだったので。
そうした中でニュージーランドで9ヶ月整備士として働いたんですけど、向こうでは嫌な仕事は断っていいし、休日に休みたいから平日に修理した車を出しちゃったりするんです。

ホンダテクニカルカレッジとかだと、上位が本田技研に就職してあとはほとんどがディーラーに就職するんですね。
自分もそのどっちかだろうと思ってたそれまでの選択肢が、ニュージーランドもある。っていう風に選択肢が広がったんです。ブラックな働き方に慣れなくてもいいぞ。と。

そう行った日本と海外の差とか考え方の違いというのは、実際に経験してわかることですよね。

右から4人目が飯尾さん。

編入を経て、真剣にやる姿勢を知った

飯尾さんのホンダテクニカルカレッジでの進路、少し特殊だと思うんですが、詳しく説明していただいてもいいでしょうか??

そうですね。最初、国際科(当時は国際自動車整備科。現在は一級自動車研究開発学科海外インターンシップコース)に入って卒業したんですね。
この3年の間に研修でニュージーランドにいきました。
そして、卒業後に同じホンダテクニカルカレッジの別学科である研究科(一級自動車研究開発学科)に3年次編入しました。国際科は3年で卒業する学科なのですが、研究科は4年で卒業する学科なので、研究科は2年通うことになります。
たまたまですけど、高専とおなじ5年の期間を学生として過ごすことになりますね。笑

国際自動車整備科海外インターンシップコースに改定後、修了期間が3年→4年へと変わったため、現在では卒業までに4年かかります。

国際科での3年を終えた後、研究科に編入されたと言うことなんですが、研究科とはどういったところなんでしょうか??

ちょっとややこしいんですが、当時は国際科と研究科は別の学科でした。
今はどちらも「一級自動車研究開発学科」の中のコースの1つです。
一級自動車整備士コースというコースが、僕が研究科と言っている学科とおなじものになります。
別の学科として、自動車整備科というものがありますが、こちらは2級自動車整備士をとるのが最終目的なのに対して、僕たちの学科は2級を経て1級を目指す学科になります。
そうした中で、コース別にいろんな特色があります。研究科の場合は、東京大学との合同プロジェクトですね。
(1級自動車整備士コースについて詳しくはこちら)

なぜ研究科に編入したんですか?

さっきの説明と少しかぶるんですが、研究科の3年では東京大学との合同プロジェクトをやるんですね。
この合同プロジェクトが社会に出てから役に立つかなって思ったので経験したくて。
それで編入しました。

そのプロジェクトってどういうものなんですか?

Team轟という名前で、具体的には海外のレースに参加する1年がかりのプロジェクトです。
東京大学の学生さんがマーケティング周りのことを担当して、僕たちは車の整備だとかを担当します。
(詳しい内容はこちらのページへ。)

プロジェクトがない他の学年の人たちとか、他学科の人たちは朝の8時から夕方の17時くらいまで授業があって、あとは部活やったりバイトやったりしてるんですけど、僕たちは土日関係なく朝から晩までやってます。

大変そうですね…

そうですね。修羅場とかもあったりして…
でもそう行った時に実際の人間性が見えたりするんです。
やる人とやらない人が出てきたりだとか、人間関係がごちゃごちゃしたり。仲間の悪いところも見えてきちゃいます。
こういうのって真剣にやらないとわからないことなんですよね。

追い詰められてから考えることで見えてくることっていうのもあったりして。
普通、失敗したらどうしよう…っていうような責任のあることって社会に出てからじゃないと経験できないはないですか。
そういうことが学生というまだ守られている身分で経験できるのは貴重ですね。失敗したらプロジェクトは大変なことになりますけど、クビになってしまうって訳ではないので。

Team轟メンバーとの写真

中退は逃げなのか挑戦なのか

最後に、中退を考えている学生に何かアドバイスをください!

僕がその学生さんと話すと想定して話させてください。

自分が楽しい人生の方がいいなって思うんです。
そうした中で自分が中退してやりたいことが何かっていうのが1つか2つありますよね。
それが今好きな彼氏・彼女がいく道だからとか、今やってることを諦めるためにだとかなら僕は中退するのを止めます。
でも、そうじゃなくて、しっかりと軸のある理由とか、夢があるなら後押しします。

退学した方がよかった人としない方がよかった人がいるので断定はできないですけど、自分自身の意見として中退は否定しないです。変な理由だったら別ですけど。
退学とかを考えているってことはその時点でなんとなく自分と合わないなって感じてる訳じゃないですか。
それが自分が今やりたいことへの挑戦なのか。やりたくないことへの逃げなのか。ただ環境のせいにしているのか。ここが重要だと思うんです。

退学しただけでは死ぬことはないので、そのあとの頑張り次第だと思います。自分がやりたいことに対して。


「周りに合わせる人間だった。」
そう語る飯尾さんは、学生の間に体験した海外での日々や、1年をかけての本気のプロジェクトを経て、色々な経験とともに頑張り次第でどうにでも人生は変えられるということを自身を通して伝えてくれました。

何となく合わないと感じている時、それが一体なぜなのか?もっと突き詰めて考えてみると、自分はどういった進路を歩むのが良いのか。はっきりと見えてくるかもしれません。

見えなかった時は、同じ経験をした先輩に話してみると何かがわかるかもしれません。そう行った時、高専マガジンで紹介している人が少しでも道しるべになると嬉しいです。


取材協力:にしこりさぶろ〜(@subroh_0508)
取材・執筆:大久保和樹
編集:若林拓海

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