進路に悩んでいる高専生にも悩んでいない高専生にも

【イベントレポート】高専キャラバン冬の陣に参加してみた。

2020年12月19日(土)に、高専キャラバン冬の陣が開催されました!
高専キャラバンとは、「かつて、あたりまえの進路を選ばなかった。だから、次も自分らしく。」をテーマに、現在活躍する高専出身者などが高専生へ情報を提供する場です。今年はオンラインで実施され、講演やパネルディスカッションが行われました。

前回に引き続き充実した一日でした!参加してきたのでレポートしたいと思います。

「自分で進路を決める」ための考え方を、元女子高専生・現マイクロソフト社員が語る

17:05 ~ 17:35
スポンサー講演①:「ぼうけんしますか? >はい いいえ あのとき私がAボタン連打した理由」
日本マイクロソフト株式会社
大川 水緒 氏

東京高専出身で、現在は日本マイクロソフトに在籍する大川さん。「高専キャラバン2020 夏の陣」に続いて、二度目の登壇だ。「自分の人生」という物語の分岐点。大川さんが、どう捉え、悩んで、決断してきたのかをお話してくださった。

大川さんはこれまでに、主に3つの分岐点があったそうだ。

1つ目は、プログラミングコンテストに出場するかどうか。
「高専に進学したのに、何もしないで終わるのはもったいないなぁ」という想いから、本科4年生の時に「組み込みマイスター」という課外活動に参加し、Team Coccoloを結成。

その後、旅をしながらできるキャラクター育成アプリを開発したところ、先生から声をかけられ、ITコンテストへの参加を決意。「大変だけど、おもしろいかもしれない!」という想いが、背中を後押ししていたという。その結果、なんと初出場で特別賞という結果に。「やってみる心」があれば、その時点でできるか、できないかは本当に関係ないなと感じた。

2つ目は、就職するかどうか。
「プロコンが楽しかったから、もっと早く始めておけばよかった……」就職の内定をもらってもなお、後悔があったという大川さん。先生に進路を相談しに行ったところ、専攻科の道を知る。内定を蹴ってしまうことに対し、先生は「何よりも学生が、後悔のない進路を選べる事の方が大切」と言って、送り出してくれた。先生の学生を応援したいという想いに、思わず感動した。

「高専の生活は、もう戻ってこれない。レアなのは……」大川さんは専攻科に進学することに。そして、イマジンカップで日本一、世界大会で2位という素晴らしい成績を修めた。現在高専4年生である筆者も、「今しかできないことはなんだろう?」と非常に考えさせられた。

3つ目は、転職するかどうか。
「大企業でいろんなことやっていて、安定していそう。」との想いから、NTTのサービスマネージャーに。しかし、時間が経つにつれ「これは、カンスト(数値が上限に達し、カウントできないこと)では…….!」ゲーマーである大川さんは、この場所ではこれ以上レベルアップできないことを悟り始める。

そこで、たまたま参加したマイクロソフトのイベントで、人事担当の人から声がかかり、とんとん拍子でカジュアル面談、そしてなんと採用となった。当時、NTTの社内異動を控えていた大川さんは、憧れで挑戦的なマイクロソフトへの転職と、居心地のよい現在の環境の二択で非常に悩むことに。

ここで大川さんの背中を押したのは、「自分のレベル上げができるのはどちらだろうか」という考え方だった。そして、大川さんはマイクロソフトへの転職を決めた。これらの経験から、大川さんは「やってみる心」「先人の知恵」「レベル上げの楽しさ」を手に入れたとのことだ。

私自身も、迷ったときにはこのような頼れる先輩方に話を聞き、自分がより成長できる一歩を自分の意思で踏み出していきたい。

最後に、Azure for Studentsなどのマイクロソフト社のツールや、大川さんが参加していたというImagin cup等のイベント紹介があった。興味を持った人は、ぜひここで一歩踏み出してみるのも1つの手ではないだろうか。

25年でたった1度の真面目な進路選択を振り返る

17:35 ~ 17:50
スポンサー講演②:「25年でたった1度の真面目な進路選択を振り返る」
株式会社BEARTAIL
坂上 晴信 氏

坂上さんは、東京高専出身で、現在はベンチャー企業でアンドロイドのエンジニアとして働いている。今回は、高専時代の進路選択の際に考えていたこと、就職後真面目に進路を考えた時のこと、さらに、あいまいな”願望”しか見えないときの動き方を語ってくれた。

高専への進学を決定したのは、「プログラミングでゲームを作れる」ことを聞いたからだと言う。大学への編入学時は同級生の目覚ましい活動に圧倒され、「負けている状態で社会に出たくない」という理由だった。またその後、家庭の事情で大学の学費が出せない状況に。


「コンビニバイトよりは、プログラマーの方が稼げるはず……」坂上さんは、高専の先輩に紹介された現在の職場BEARTAILに就職を決めた。高専進学・編入学・就職。以上の3つの選択を、坂上さん自身は「反面教師として捉えてほしい」と笑って話していた。

一方、この後に進路を本気で考えた時期が訪れたという。それが、転職活動を行っていた時だ。入社した直後に陥った倒産寸前の危機を乗り越え、開発業務にも慣れてきていた坂上さん。しかし、ふいに参加したアンドロイドエンジニア向けのカンファレンスの懇親会で、外部の人と話せないことに気づき、自身の力のなさに衝撃を受けた。


そこで、気になる業界の創業者に話を聴きにいくも、社会からの評価や安定性を話すばかり。想定していたものとは異なっていた。会社倒産の危機を乗り越えた坂上さんが重要だと感じていたのは、”事業への愛”であったのだ。それを持ち合わせるCEOは社会に少なく、現在所属している会社であると気づいたという。

坂上さんは初めて「今の会社での仕事と成長速度を両立できるエンジニアになりたい」という”願望”を抱いた。さらに、坂上さんが好きなアニメ「シンデレラガールズ」のメインキャラクターを参考に、「今までやっていなかったことを業務外でやれば仕事に繋がる」と分かり、将来の道筋が明確に見えたそうだ。

この願望を胸に突き進んでいった結果、大きな実績が伴ってきたと言う。坂上さんの最後の選択は、自分の信念や好きなものを基に、行動しながらも戦略的であるように思えた。

最後に坂上さんは、「あいまいな”願望”しか持っていなくても、焦ることはない」とお話していた。”願望”は変化し続けるからだという。さらに、”願望”が見つかったときのために、準備をしておくことができるし、必要であるとのことだ。

坂上さんのメッセージと、今私が持っているあいまいな”願望”を胸に、目の間にあるできることを確実に行っていきたいと思った。

人工知能の進展と高専の可能性

17:55 ~ 18:10
基調講演:「人工知能の進展と高専の可能性性」
東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻 教授
松尾 豊 氏

まずディープラーニングの活用事例について見せていただいた。工場での不良品の選別、駐車場での満車具合の判断など、多くの場面で私たちの生活を支えている。しかし松尾氏によると、これらはまだディープラーニングの発展の第一段階に過ぎないそうだ。

まず第一段階である画像認識、次に自動運転などの空間認識、最後に文の意味を理解するなどの言語認識の順に進化していく

今日のAIにできないことを端的にいうと「ロボットが冷蔵庫を開けてビールを取り出せない」である。つまり画像の処理はできるが、運動神経がないということだ。しかしかつてはソフト寄りだったディープラーニングが、これからはハードと結びつく。そしてディープラーニングとロボットが融合する。松尾氏によると、この時サービス業など世の中にある多くの産業で、今までにない大きな変化が起きるそうだ。このときこそ、高専生であることが強みになるだろう。

またDCONというディープラーニングを用いたコンテストについての解説もされた。毎年多くの高専生が参加し、優勝したチームは起業し社会に進出しているそうだ。DCONについて詳しくはこちら

そして講演の最後には松尾氏自らがラブレターと認める、高専生への熱いおもいを述べられた。
「なぜ高専が良いのか、それはまず実践的であるからだ。社会の進展が早いなか、積み上げで学ぶより実際にやってみることが先に行ける時代だ。


また一人の尖った人が世界を変えるからだ。平均的に優秀な人は求められておらず、尖った人の才能を伸ばすことのできる高専の環境は素晴らしい。そしてエンジニアがイノベーションの中心の時代だからだ。ビジネスやコミュニケーションは後から得ることができるが、エンジニアリングを後から学ぶことは難しい。」

筆者は、「これからディープラーニングがロボットと融合する」という言葉が特に心に残っている。高専生であることを誇りに、社会にとてつもない変化の波を起こす人になりたいと思う。

全国高専生の挑戦withひろしまサンドボックス

18:10 ~ 18:25
基調講演:「全国高専生の挑戦withひろしまサンドボックス」
広島県知事
湯﨑英彦氏

広島県が取り組んでいるプロジェクト「ひろしまサンドボックス」についてお話し

していただいた。このプロジェクトは、「社会の課題をデジタル技術で解決し、そのために広島県をまるごと実証実験の場として提供する」というものだ。現在、67件の実証実験を進めているそうだ。

そして今回新たなプロジェクト「D-EGGS PROJECT」についても説明していただいた。コロナ禍での環境の変化による、「新たな日常」をテーマとし、アイデアの卵を孵化させ広島が育てていくというものだ。ぜひ高専生に参加してほしいと湯崎氏は述べた。なんと経済的な支援や事業化に向けての専門家によるサポートもついた、起業を包括的にサポートする一大イベントだ。詳しくはこちらからどうぞ。

湯崎氏は「このプロジェクトは皆さんの人生を変えるチャンスとなる。高専生だからこそできる世の中へのソリューションを待っている。」と締めくくった。

また、高専キャラバンとひろしまサンドボックスがコラボした企画が絶賛受付中だ。企画・デザイン・エンジニアリングをプロとともに進めながら、プロトタイプの完成まで行うものであり、企業をするとはどういうことなのか体験できるようになっている。詳しくはこちらからどうぞ。


皆さんもこれを機に、高専生ならではできることを世に送り出すことを味わってみてはどうだろうか。

高専生とイノベーション

パネルディスカッション:「高専生とイノベーション」
東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻 教授 松尾豊氏
広島県知事 湯﨑英彦氏
フラー株式会社 代表取締役会長 渋谷 修太

高専キャラバン一日目の最後には、先ほど講演していただいた松尾氏と湯﨑氏、そして今回の高専キャラバンの主催者である渋谷氏によるパネルディスカッションが行われた。

質問1「これからイノベーションを起こす上での必要な要素とは?」

社会的な課題に取り組んでみたいとか、とにかくこれに突っ込んで作ってみたいとか、そういった意欲が大事。どのような分野のイノベーションでも何か解決したい、何か探求したいという意欲がとても重要であると思う。

国内では環境が次々に良くなっていると感じる。しかし結局はやる人の気持ちの問題だ。ただ、突然大きなことをやろうと言われても、実感できないのも事実。コミュニティの中で成功例が出てくると、自分でもできるかもと感じるようになり、この気持ちの連鎖が大切だ。

課題を解決することが近道だ。しかし同時にタイミングもまた大事だ。私の場合、スマホが社会にでたタイミングで会社を設立したことが大きかった。デジタル化への必要性が熱い今こそ、さらに高専生への期待を感じているではないかと思う。ぜひ地方の課題を片っ端から解決してほしい。

質問2「イノベーションを起こす上で、高専生に期待することは」

渋谷さんのような成功例が出てくることが大事。敷いてある道はどんどん突っ走っていって、ないところは開拓していくことが重要だ。

最近は就職浪人や留学などに過度に心配し、チャレンジしない人が多いと感じる。しかし将来うまくいかなくても意外と大丈夫、失敗してもなんとかなるというチャレンジマインドが大切。もし失敗しても、その技術や経験が大きな糧になるはずだ。

いくつかの知識を極めるといい。高専はどうしても技術のみを極めがちだが、そこでもう1ジャンル何かを身につけるとよりイノベーションしやすくなるのではないか。

質問3「進路について意思決定する上での考え方やコツは?」

例えばどちらを選択するかという場面で、多くの人はどちらかを選びがちだが、現実にはやり方を工夫すると両方手に入れることの方が多い。本当どちらかを犠牲にしないといけなくなって、初めて選択をすれば良い。しかし多くの人はそれまでの努力を惜しみ過ぎている。幅広くやって、良いものを然るべきタイミングで選ぶべきだ。

松尾氏のおっしゃる通り、私自信今までパラレルを意識してきた。例えば起業も地方への移住も数年前から計画的に進めてきた。何かを成し遂げるにはそれまでの助走が重要である。高専生もそこら辺を賢くやれば良いのでは。

最後は自分の心に従うことだ。しかしやりたいことがない学生が多くいることは事実。仕事や勉強をして目の前のやるべきことに集中していると、やりたいことやるべきことが見えてくるはず。いつそれを見つけられるかは人それぞれだが、それまでの間に全力で何かをすることが重要。何かを成すときに半分ぐらいの力でできることはないから、全力を出す経験が大事。

学生へのエール

私は高専生を応援の立場だ、それは高専生が本来は価値があるけど評価されてない、でもこれから出てくるものだからだ。早く大きな変化が起こると良いと思っている。

若さは本当に素晴らしい、そして高専生は可能性を秘めた人だ。エンジニアリングは簡単に手に入れることはできない、その可能性を最大限に伸ばしてほしいと思う。

高専生は原石であり、まだまだ世の中からの評価が低い。こういう機会でぜひ自信を持って自分の能力を発揮して輝いてほしい。

まとめ

今回の高専キャラバンを通し、十人十色の進路があることを改めて実感しました。筆者もまた多くの高専生のように、卒業後の進路に悩み続けています。様々な方面で活躍される方々の話は本当に参考になりました!ありがとうございました。

また今回高専キャラバンを見逃した方やもう一度ご覧になりたい方はアーカイブの閲覧を希望することで見ることができます。詳しくはこちらからどうぞ。


取材・執筆:鈴木天馬 成田琴美
編集:鈴木天馬

この記事を書いた人