進路に悩んでいる高専生にも悩んでいない高専生にも

高専卒兼業ライターによる、「ゲーム的思考で歩む人生のススメ」

ゲームって超楽しいですね!

僕はエンジニアをやりながらライター(文章を書くほうの)をしている岡本智博(オカモトラボ)と申します。高専マガジン様に寄稿のお声がけをいただきましたが、正直なところ高専時代はろくに勉強せずゲームばかりやっていたので、今日はゲームについて書かせてもらおうと思います。

僕が高専時代によくやっていたのはファイナルファンタジーとか、スマッシュブラザーズ64とか、あとパソコンのゲームでAge of Empires IIとかよくやっていました。

ゲームにはレベルがある

さて、多くのゲームには「レベル」という概念があります。

レベルが高いと能力が高かったり、いろんな魔法が覚えられたり、要するに優れているのです。

そしてレベルを上げるためには「経験値」が必要です。

レベルを上げるために経験値を稼ぐというゲームのシステムは実によく出来ているなと感心します。現実社会にもかなり似たところがあるからです。

僕はこれを読んでいる方たちよりも恐らく15歳くらい年上ですが、必ずしもレベルが高いとは限りません。僕よりレベルが高い人もたくさんいらっしゃることでしょう。



時間の経過とともにレベルが上がるゲームはありません。あるとしてもつまらなそうです。同じように年を取ったからといって優れる訳では決してありません。

良い経験値をたくさん積んだ人ほど活躍できるという点においては、ゲームだけでなく現実社会でも同じです。

僕はライターをしていますが、僕の周りのライターさんは引き出しが多く、文章には深みがあって面白いです。僕もいずれはそんな文章が書けるようになりたいものです。

高専時代にレベルを上げていなかった

この様にゲーム好きな僕が自分でもゲームを作りたいと思うのも時間の問題でした。中学生の頃にプログラミングを勉強し始め、その後の高専進学につながります。

高専生は比較的時間を自由に活用する事ができます。良い経験を積むチャンスに恵まれている一方、僕のようにゲームに熱中する事もできます。

僕はゲームばかりやっていましたのでゲーム内でのレベルが上がっていましたが、現実のレベルは上げていませんでした。

高専を卒業し社会に出ると、なんとなく他の人よりも上手く立ち回れない気がしました。これは本来社会に出るまでに上げておかなければいけないレベルに達していなかったのです。

それにうすうす気が付いていながらも、気づかないふりをしたり、他人のせいにしたりしていた気がします。そして残念な事に現実社会での「レベル上げ」はそう簡単ではありません。気が遠くなるほどの多くの時間と労力がかかります。

あとから気付いた事ですが、高専時代の方が社会人の時よりレベルが上げやすかったかもしれません。就職して同じ仕事に従事するとどうしても得られる経験値は偏ってしまうのです。

レベルが高い人の言動を表面的にまねる事はできますが、その言葉には重みがなく、すぐにボロが出てしまいます。

ゲームには存在しない現実世界のバグ

実はこの現実社会には、ゲームの世界にはないバグがあります。

ゲームの世界では「レベル14」のキャラクターは、誰が見ても「レベル14」です。

しかし現実社会では「自身のレベルが低い人ほど自分のレベルが高い」と勘違いし、「レベルが高い人ほど自分のレベルが低い」と思い込むバグがあります。

このバグを「ダニング=クルーガー効果」と呼びます。

どうしてそうなるかと言うと「ものごとを深く知れば知るほど自分が無知である事を認識できるようになる」からで、逆に「レベルが低いキャラクターは自分のレベルの低さを認識する能力すら持ち合わせていない」からだそうです。

ギリシャの哲学者ソクラテスは「無知の知」と言い、中国の孔子も「知之為知之、不知為不知、是知也(知るを知ると為し、知らざるを知らずと為す。是れ知るなり)」と言って、このバグに注意するように言っています。




社会に出ると「俺はこんなに優秀で素晴らしい人間なんだ」という自慢話をしたり、過去の武勇伝をことさらに語るキャラクターとよくエンカウントします。本当にそのキャラクターは言葉通りレベルが高いのか、よくよく見極めなければなりません。見極める方法は、しゃべっている内容ではなく「その人の実績」で判断する事です。

僕の経験則ですが、残念ながら過去の自慢や武勇伝をひけらかすキャラクターは、中身はザコキャラの事が多く、強い相関を示します。

しかし残念なことにザコキャラは前述のバグによって自身のレベルが低い事に気づいていないため、レベル上げという努力をすることがありません。

これはゲームの世界にはない、現実社会における悲劇なのです。このバグによる罠に陥らない様に注意しないといけませんね。

もちろんその逆でとんでもなく優秀で素晴らしい人もたくさんいます。しかし総じてそういう人たちは謙虚なことが多いです。

ステータス画面を持とう

僕たちは誰しも自分がどんなに優秀で素晴らしく、レベルが高いキャラクターかを示すべきですが、自分で「俺はこんなに優秀なレベルの高いキャラクターなんだぜ!」など自慢したり武勇伝として語ったりしてしまうと、前述のザコキャラと同じ悲劇に陥ります。

口で言う代わりに自分専用の「ステータス画面」を作るというのはどうでしょうか。

「ステータス画面」とは、キャラクターの能力を一目で確認できる画面のことで、多くのゲームで採用されているやつです。

現実世界でのステータス画面は、自分のサイトだったり自分のブログです。またSNS等でも使い方によっては良いかもしれません。そしてそこに積み上げてきた実績を書き加えていくのです。実績は大会で何位だったとか、コンテストで入賞したとか…そこまで立派なものでなくても、こういうものを作ったとか、こんな事を考えた…などでもいいですね。ちょっとでも良いので書き加えて更新しつづけましょう。

作ったサイトやブログは対外的には「ポートレート=実績集」として使うことができます。さきほど自慢話や武勇伝をひけらかすキャラクターが本当に優れているのかは実績で判断するべきだと言いましたが、その逆もしかりです。実績で判断してもらうのが良いです。

ステータス画面は就職活動にも有利に働くはずです。いずれ転職することがあればそのときにも使えるかもしれません。

採用担当者の立場に立って考えると、「潤滑油です」とか「噛めば噛むほど味がでるスルメです」と言うより、ちゃんとポートレートサイトがあって「これが実績です」と言える人の方が説得力があると思いませんか?…思いませんか。そうですか。

ブログを書き続けて文章が面白ければライターの依頼があるかもしれません。こういうプログラムを作ったと書いてあればプログラミングの能力を知ってもらえます。イラストを描き溜めて上手かったらイラストの依頼があったり、実績がユニークなものであればテレビや雑誌、ウェブ媒体の取材が来ることもあります。

テレビや雑誌の取材の人たち「リサーチャー」も最初はネットで検索してきます。ステータス画面がなければ、どんなに優秀でも見つけられることはありません。

一般的には高専出身者などの技術畑の人は能力があってもそれを発信するには無頓着な事が多いという気がします。




そしてもちろん、ステータス画面を作成するのは自分自身の為でもあります。

ステータス画面で自分の今のレベルを確認できます。思ったより書く事が少なく、書く内容もしょぼかったら、自分のレベルは自分で思っているほど”今は”高くないのかも知れません。ただし、もしそうだとしてもなんの問題もなく、ここから経験値をためてレベルを上げていけばいいだけです。

逆にいまひとつ自分に自信が持てない人は実績が積み重なってくるのを見れば、自然と自信につながるのではないでしょうか。

僕も以前から簡単なサイトは持っていました。しかし主にプログラムの検証用で発信を行っていたわけではありません。ブログのシステムを検証するために自分のサイトにブログをインストールし、それがきっかけでブログを書き始めました。

結果的に上記のステータス画面になった訳です。上記の様な効果を狙ったというよりか、どちらかというと期せずしてステータス画面化したのですが、本当にやってよかった事のひとつです。

ステータス画面を見てお仕事の依頼を頂いたこともたくさんありました。「こういう能力の人がいるのか」とテレビの取材が来たこともあります。

ブログで書く経験値をためていったことで、僕が長年にわたってファンだったデイリーポータルZというWEBメディアで記事を書かせてもらえるようにもなりました。

ライターというのは経験値がものを言う世界です。どんな経験をしてきたかが文章の良し悪しに影響します。そしてライターとしての経験も自分の糧となっていると実感します。




そして色々と書きましたけど最後に一つだけ、注意していただきたい事があります。

エンジニアをやりながらライターやっているなんて胡散臭いし、しかもゲームばっかりやっている様な奴の言うことなんて信じちゃいけませんよ!

それでは高専で良いゲームライフを!


執筆:岡本智博
編集:若林拓海

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