進路に悩んでいる高専生にも悩んでいない高専生にも

高専から自由応募で某飲食企業へ!自分の軸を決めた5年間

高専生の中には、「このままエンジニアになって、自分はやっていけるのか?」と悩んでいる人も多いと思います。高専に入ったからには、やっぱりエンジニアになるべきじゃないのかと悩んでしまう人も少なくありません。

高専の電気電子工学科から自由応募で就活をし、某飲食企業に就職した渡邉慎悟さん。
専門とは違う分野に就職した慎悟さんですが、高専在学中には、エンジニアになるべきかどうか葛藤があったといいます。
そんな慎悟さんに”自由応募で他分野に就職する”という決断のきっかけを伺いました。

渡邉慎悟
鈴鹿高専電気電子工学科を2018年に卒業し、某飲食企業に自由応募で就職。現在は働きつつ、CAFE AOIを運営中。

高専に入った理由は”楽しそうだったから”

高専で就職というと、ほとんどの人が推薦で、学校に来た求人の中から選ぶと思うんですけど、なぜ全く別の分野に自由応募で就職しようと思ったんですか?

電気電子という分野がいつまで経っても好きになれなかったからですかね。

じゃあなんでそもそも高専に入ろうと思ったんですか?

楽しそうだったからですね(笑)。
中学生の時、高専の存在自体は知っていて、進路の選択肢の一つとして考えてはいたんです。そんな時に行ってみた高専祭で僕は衝撃を受けました。

なんなんだこの楽しそうな学校は!!!!!って。

他の学校のイメージだと、やはり勉強がメインで、雰囲気もそんな楽しそうなものではなかったんです。でも高専祭の雰囲気を見て、こんな自由で楽しそうな学校があるなら入りたい!って思ったんです。

なるほど…。
でも高専の授業内容ってゴリゴリのエンジニア向け授業ですよね?
入ってからつらくはなかったんですか?

地獄的に辛かったです。笑
難しいし、授業も面白くなさ過ぎて。成績も激ショボでしたね。正直、中学生までエリート系っぽかったんでどうせ高専に入っても1・2位とか取っちゃうんやろな〜と思ってたんですけど、そんなことはなかったですね(笑)。そして入学したてでそうやって思ってた自分をしばきたいですね、恥ずかしいので。

2年生の時、親に土下座して、学校をやめたいとお願いしたこともあります(笑)。

そうなんですか!
でも結局やめなかったんですよね?

まず高専に入るときに、「慎悟はたぶんエンジニア向きじゃなくて、もっと人と関わる仕事の方が向いてると思う。」って親に反対されていたんです。小学生の時から友達とわちゃわちゃ遊んでるタイプだったので、そのイメージでしょうかね。

その反対を押し切って入学した学校をやめたいなんて、何考えてんだって言われて。だいぶ反発してましたね、親に対して。今思い返せば超正論で説教されてて恥ずかしいんですけど(笑)。

ということで、結局学校をやめることはなかったです。
卒業するまでこの勉強を続けるのかと思うと絶望しました。
そしてこの時にはもう、エンジニアになるという選択肢は消えていましたね。

自由応募で就職しようと思ったのは、4年生の3月

そんな葛藤があったんですね。
最終的に自由応募で就職しようと考えたのはいつ頃なんですか?

みんなが自分の決めた進路に向かって努力している、4年生の3月です。

結構遅いんですね。

そうなんです。
葛藤というか、逃げ続けた結果、その時期まで引っ張った感じでしたね。まあ人生の選択から目をそらしていたってことですね(笑)

4年生の時に出す、進路調査書ってあるじゃないですか。それに何も書けなくて、出せなかったんです。そうしているうちに先生に、早く出せって言われて。早く出せって言われても高専向けの企業説明会も全部欠席してましたし、募集一覧すら見てないし、どうしたらええねん。と。そう思いながら、ソニーって書いて出しました。たまたま手元にウォークマンがあったので笑
すると先生が、「ソニーって言っても、いろいろあってな…?」といろんなパンフレットを持ってきてくれて、説明してくれたんです。
でも僕はソニーに行きたいわけじゃないからって(笑)

うわあ、先生かわいそう(笑)

いやほんとに。申し訳ないです(笑)

そこでやっと、やっぱり僕はエンジニアになりたいわけじゃないから、自由応募で行きたいところに行こうって思えたんです。

やりたいことは、マーケティングだった

いま慎悟さんは某飲食企業に就職されていますが、なぜその企業を選んだか教えていただけますか?

エンジニアではない職業につくと決めて、自分のやりたいことは何かと考えたときに、一番近かったことがマーケティングだったんです。

マーケティングですか。
そう思った理由はあるんですか?

高専にいるとき、僕は小さい居酒屋でアルバイトをしていて、そこでバイトリーダーをやらせてもらってた時期があって。いい意味で小さな会社だったのでスタッフの意見が通りやすくて、色んなことをチャレンジさせてもらえる場所でしたね。

大手チェーンの飲食店とかだと、きちっとしたマニュアルが用意されていると思うんですよ。接客のオペレーションや、季節ごとにどんな商品をおすすめするか、飲み放題のキャンペーンとか。そういう決まりごとがなく、自由度が高かったので様々な取り組みをさせてもらえましたし、かなり勉強になったと思います。

どういうキャンペーンを打ち出したら新規顧客を獲得できるか。どんなクーポンがウケるか。どうやったらこのお客さんがもう一回来てくれるか。客単価をあげるにはどんなおすすめをしたらいいか。スタッフが楽しく働くためにはどうすればいいか。みたいなことをめちゃめちゃ考えました。で、色んなことを試して、結構失敗に終わることもあったんですけど、だんだんと客数や売り上げとして成果が見えて来たんです。自分の提案したものがどう影響して、どう数字に表れていくかっていうのを考えるのがすごく楽しくて。

これ、もちろん規模は小さいんですけど、マーケティングってやつをやらせてもらってるのか!と。

マーケティングについて語りながらドリアを頬張る慎悟さん

就職する企業の選び方は、自分の軸と重なるかどうか

なるほど。
実践的なマーケティングの体験がそこでできたんですね。
でも、BtoCのビジネス、特に小売業ではマーケティング部門って必ずありますよね? なぜ某飲食企業を選んだんですか?

僕が就活をはじめて企業選びをしていた時に大事にしていたことが、
「会社のビジョンが、僕の軸と被っているかどうか」
ってことでした。

軸、ですか。

そう、軸です。僕の軸は「チームで取り組むことが、他の人の楽しいや面白いに繋がるかどうか」です。なので会社選びの軸もそこにありました。「人を大切にし、商品価値だけでなく、起こすアクションにブランド価値があり、社会に影響を与えられる会社」です。

だから僕は業種を絞らずに会社を選びました。
最終的に、ビジョンが重なった、飲食業、アパレル、コンサル企業、人材系などを含めた6つの企業に応募しました。

やりたいことというよりは、同じ考え方をもつ企業で働きたい。という思いが強かったんですね。

そうですね。
そのなかでマーケティングに関することについて学びながら働けそうなところを選びました。

徹底的な自己分析をすれば、進みたい道が決まる

なるほど。
でも一般的に自由応募での就活って聞くと、20~40社くらい応募するイメージがあるんですけど、慎悟さんは6社しか応募しなかったんですか?

そうです。
そもそも、何10社も応募する人って正直アホだとおもってて(笑)

結構一般的な気がしますけど…(笑)

何10社も応募してると、すごく時間がかかって大変ですよね?
毎回エントリーシート用意して、質問の対応考えて、企業分析して…って。

時間をかけるところはそこじゃなくて、まずは徹底的な自己分析だと思うんです。

自己分析ですか。
詳しく聞かせてもらっていいですか?

例えば、就職面接のときに、自分のエントリーシートや質問対応表などを必死で読んでいる人、いるじゃないですか。この会社はこういう人材を求めてるはずだからこう答えて…企業分析したことをアピールするために調べたこと答えて…って。
あれがもうだめで、質問が来た時の答えを自分の中に持ってないってことじゃないですか。そういう人は用意していた質問と別の角度から質問が来た時に、絶対ぼろが出ると思うんです。

つまり、自分の軸を持ってないってことです。

僕は6社しか受けてませんが、どんな質問が来ても話の結論が結局同じようなところにたどり着いていたイメージですね。
これは、徹底的に自分のことを分析して、軸を見つけているからだと思うんです。

確かに…。
受ける企業によって答えを変えるって、就活あるあるで聞いたこともあります。

だから、自分の軸を見つけるために自己分析をする。すると自分がやりたいこと、働きたい環境がわかってくるから、結果的に応募する企業も厳選されて少なくなると思うし、一社一社に対してかける時間も少なくなると思います。

これは就活以外にも言えて、自分の軸がはっきりしていると何事にも迷いがなくなるので、無駄なことをしなくていいんですよね。

これは結構僕にも刺さりますね…。
徹底的な自己分析が、進路を導いてくれるってことですね。

軸を見つけるために、自分に問いを投げかける

じゃあ自己分析ってなんなの?って話なんですけど、まず、自分が何になりたいのかってとこは具体的じゃなくてもいいと思います。

詳しく説明すると、まず「面接 質問」とかでググりましょう。そしてその質問に対して考えたことをノートに書いていきます。

それだと、さっき言ってた質問対応表と同じじゃないですか?

ノートの書き方が違って、文章で書かない方が良いです。キーワードだけ書いてください。あとはひたすら、自分に対してWhyをぶつけます。

例えば「あなたがチームのリーダーであった時、どんなチームにしたいですか?」この質問に対してまずどう考えますか?堅実なチームなのか、楽しいチームなのか、メリハリのあるチームなのか。

じゃあ次にWhyです。なぜそのチームを目指すのか。また問いかけます。その答えに対してまたWhyを作ります。その繰り返しで、「あ、自分のこの考えって、小学生の時からあるんだ」とか、「こう考えるのって今思い返すと自分がああいう環境にいたからだな」とか、今まで流れていた時間に自分を構築しているものが散りばめられていたことに気づくと思うんですよ。

なるほど。
自分に問いを投げかけることで、自分を分析するということですね。

ノートには、1つの質問に対して「楽しいチーム」「コミュニケーション」「小学校」「アルバイト」「団結」とか、自分の中でのキーワードだけが書かれている状態にします。引き出しの中にファイルが何冊かあって、見出しタイトルだけ付ける。その中身は頭の中で整理しておくという感じでしょうか。

就活の時は、質問に対してどの引き出しを開けて、ファイルの順番をどうするかを考えます。中身まで文字に起こしてしまう人が多いと思うんですよね。それをしてしまうと柔軟な話し方ができなくなってしまうので。
あとは抽象化、具体化、抽象化の流れで自分のストーリーと一緒に伝えるということです。具体化して話すとグッと伝わる内容が密になります。これはみなさん結構簡単にできるんじゃないですかね?「それは今までのどんな経験からなのか」って部分です。

重要なのは最後の抽象化で、どんな質問でも最後にもう一度「だから結局、自分はこういう人間です。こういう価値観を大切にしてます。」ってとこまで持っていく話し方をすると、面接が終わった後に相手側に「あの子はこんな人だった」って印象がつくし、それが伝えることの本質ですね。そして、その最後の抽象化が自分の軸ですね。どんな質問をされても、結局ここに戻ってくる。という感じで。

自由応募での就活をする人に非常にためになる話ですね…
自己分析したくなってきた!!

これは正解ではなく人それぞれベストなやり方があると思うので参考にしていただければ!

進路に迷う、高専生へのメッセージ

最後に、進路に悩む高専生に対してメッセージをお願いします!

誰がどう思っているか?親は?友達は?世間は?企業は?と考えるよりもまず、自分は何がしたいのか?自分はどうありたいか?自分はどんな時にわくわくするのか?自分が夢中になれることって何か?について徹底的に考えてみるといいと思います。

それが高専に入ったことでやりやすくなっているならそれは超ラッキーです。是非ものにしてください!もし、考える進路にモヤモヤした気持ちがあるのなら、視点を少し広げてみるといいかもしれません。

みなさんが今与えられている環境が、選択可能な全ての場所ではありません。選択の幅は自分で広げることができます。あと最後に、僕は高専で過ごした5年間を全く無駄だったと思っていません。高専でみなさんが注力してきたことはどこかで生きると思います。

今を全力で楽しんでください。

ありがとうございました!

終わりに

慎悟さんは「自分の軸を持って進路を決めることが大事」と語ってくれました。
正直、みんなと全く違う進路を選ぶことって怖いものだと思っていました。しかし慎悟さんには「自分の軸」があったため、何の迷いもなく自由応募での就活ができたそうです。

皆さんは、自分の軸を持っていますか?
僕もさっそく今から自己分析しますので、あなたもぜひ自分のことについて真剣に分析してみてはいかがでしょうか。

ちなみに慎悟さんは、「あなたが値段を決めるカフェ」としてCAFE AOIを運営されています。
詳しくはこちらのnoteに書かれていますので、ぜひチェックしてみてください!

取材・編集:若林拓海
写真:大久保和樹

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