進路に悩んでいる高専生にも悩んでいない高専生にも

知的好奇心で頬張り続ける。高専からの経済学部編入を果たした行動力

「高専の勉強、嫌いじゃない。嫌いじゃないんだけど、他のことも学びたいなぁ」

15歳から特定の分野を極める高専生だからこそ、そのような想いを持つことも少なくはありません。でも、いざ全く別の進路に変えようとしても、なかなか一歩が踏み出せないことがほとんどだと思います。高専機械工学科を卒業した潮田さんは、見事にその一歩を踏み出しました。高専からの経済学部編入を果たした潮田さんにお話を伺いました。

父の背中を見て高専へ(でも数学は苦手)

 家族や親戚が高専出身だったということをきっかけに高専を選ぶ方も少なくないと思います。潮田さんもその一人でした。

「国内大手メーカーで働く父が高専出身だったんです。父が参加する高専OBの集まりにはよく一緒に行っていましたし、昔から高専の存在は近くにあったように思います」

当時はリーマンショックの影響で、大学生は就職難でざわついていました。そのような背景も高専を選ぶきっかけとなったようです。

「当時私立大学に通う兄もなかなか就活苦労するのではと心配していましたし、就職率が高い高専はなお魅力的に見えました。正直、中学のときは数学が苦手でした(笑)。でも、テクノロジーやものづくりに対する憧れや親近感もありましたし、特に高専を選ぶことを躊躇はしませんでしたね」

中学を卒業した潮田さんは、関西のある高専の機械工学科へ進みます。

高専の洗礼を跳ね除けた先の進路選択

 案の上、潮田さんは高専の洗礼を受けます。

「あんなに数学をやるとは思ってもいませんでした(笑)。さらには、『機械工学入門』という授業を受けて、わからない言葉やわからない数式が一気に振ってきて絶望したのを覚えています(笑)。でも、成績の順位が下がるのは絶対に嫌だったので、頑張って勉強しました。結果的には5年間上位をキープすることができましたね。」

持ち前の負けん気で苦手だった数学もなんとか乗り切り、高専時代の潮田さんは野球に没頭し続けます。ただ、4年生になり部活を引退すると、周りが進路を意識し始めました。

「周りの友人で進学希望が多く、このまま決めてしまっていいのかと考えるようになりました。家族からも『大学もせっかく行ける環境にあるなら目指すのも1つの人生。選べるのはとても幸せなこと』と勧められ、進学を考え始めました。しかし、ずっと就職を前提に考えていたので、どのような分野に進むべきなのかは全く思い浮びませんでした。」

このまま機械系の研究を続けるか否か…


通常であれば、ここでなんとなく今までと同じような分野の大学編入先を探すことが多いですが、潮田さんはそうではありませんでした。衝撃的な体験をインターンシップ先で得ることになります。

初めて吸った外の空気、新たな道への挑戦

潮田さんは4年生のときに、大手医療機器メーカーのインターンシップへ参加します。それはよくある高専生向けの技術的なものではなく、通常の大学生も参加するようなインターンシップでした。

「周りはガチで就活している大学生ばかりでした。インターンシップでは毎日毎日課題解決のグループディスカッションが行われました。今まで関わったことの無い人々と、今までに体験したことのないような頭の使い方をしました。」

通常であれば怖じ気ついてしまうところですが、そこは根性で高専の数学を乗り切った潮田さん、経験を物にします。

「皆で意見を出し合って一つの答えを出していくことの楽しさに気づきました。高専では一人で考えて何か一つの答えをだすことばかり続けましたが、このときは皆で意見を出し合って一つの答えを決める。計算では表現できない、別の形のクリエイティビティを知りました。」

知らない世界に飛び込む意欲は加速します。

「このような意思決定のプロセスを学べるのはどのような分野なのだろうと調べた時、経済学部という進路に白羽の矢が立ちました。もちろんニッチな進路なのは自覚していました。ただ、大学とは学びたいことを学びに行くところだと思います。機械工学を極めるより、もっと広い視野で社会構造を考えたい。迷いはありませんでした。」

進む道が固まった潮田さんは、行動力の塊となり、九州大学経済学部への編入を果たしました。

まさかの経済学部への編入

知識を得るために欲張り続ける

理系出身の経済学部となると、商社や金融系などの就職を考えるのかと想像します。しかし、そこでも知的好奇心旺盛な潮田さんはひと味違いました。

「せっかく広がった視野をここで狭めたくないと思いました。なので、人材系の企業に進むことにしました。」

潮田さんは大手人材会社の営業として働くことを決意します。

「どの業界も人材は常に欲している。人材という立場から様々な業界に触れることで、より社会全体を掴む力がつくのではないかと思っています。」

潮田さんは都内の大手人材会社で活躍している


何がそこまで潮田さんを突き動かすのでしょうか。

「とにかく行動して新しいことを知る喜びがエンジンとなっているのだと思います。だから高専時代の自分には『もっと外見て良いんだよ。欲張って行こうぜ!』と言いたいですね。結局、人間自分の知ってる範囲でしか物事の判断ができないので。」

進路に迷っている皆さんは、どこまで欲張りに動けているでしょうか?何かと言い訳を並べて、おとなしく過ごしても、知識の幅は増えていかないようです。潮田さんの行動力は、そんな皆さんに勇気を与えてくれるものだと思いました。悩んだときこそ、欲張りになってみてはいかがでしょうか。


執筆:鈴木駿太
編集:大久保和樹

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