進路に悩んでいる高専生にも悩んでいない高専生にも

専門家になるだけが高専生の生きる道ではない。

現在は株式会社コノテのCEOを務める山田邦明さん。(@kun1aki)

山田さんは、津山高専の情報工学科を卒業後、筑波大学の経営工学部に進学。卒業後、京都大学のロースクールへと入学し、弁護士の道へ。その後は株式会社アカツキの上場に関わる等の多彩な仕事を経験し、2018年に株式会社コノテを創業しています。

そんな異色な経歴を持つ山田さんに、「高専生に必要な考え方」を伺いました。

弁護士を目指したのは、失恋したから

今日はよろしくお願いします!

まずさっそくなのですが、なぜ弁護士になろうと思ったのですか?高専を卒業して弁護士になろうって、普通思わないですよね?

そうですよね。まずそこ気になりますよね。(笑)

実は弁護士になろうと思ったきっかけは、失恋なんです。

失恋ですか?

そうです。18歳の時に失恋しまして。めっちゃつらかったんで、それをごまかすために日本で一番難しい試験を受けようと思ったんです。だから司法試験を受けようって決めました。

弁護士になりたいわけではなかったんですね!

理由が面白すぎる…

そこから、弁護士をやるなら自分で経営もしっかりしたかったので、経営を学べる筑波の経営工学科に編入しようと勉強していました。

ちょうどロースクールができるタイミングだったので、大学院でロースクールに行こうと考えていました。

そして実際に弁護士になられたと…

ショックを紛らわすためとは言え、すごい行動力ですよね。(笑)

だから弁護士を選んだのは、たまたまなんですよね

何かにチャレンジしている時の方が楽なんですよ。だから一番つらいところを目指しました。(笑)

なぜそんな発想になったのかがとても気になります。

昔も一度あったんですよね。似たようなことが。

高専に入ったきっかけは中学の時の先生

僕は中学生の時にサッカースクールに入っていたんですけど、やめちゃったんです。先輩にいじめられてて。

やめたらやめたで、何もすることがなくなっていたときに、先生が「お前、目が死んでるな」って声をかけてくださったんです。

目が死んでいるってことは、目標がないってことだ。と言って、高専の過去問をくれたんです。

なるほど。難しい問題を解くことを目標においてくれたってことですね。

そうなんです。

でも過去問をやっているうちに、できない問題にぶつかるとイライラしちゃったんで、勉強して受験することにしました。

高専を選んだ理由も、やりたいことがあるからではないんですね。

そうです。高専を一種のハードルに見立てて、目指して走るためのものでした。

もちろんちゃんとした理由もありますよ?

20年くらい前なんで、当時インターネットの波がすごい来てたんです。もうこれはインターネットの時代が来るなって思ったんで、情報工学科に入りました。

好きなこと、やりたいことではないけど、役に立つと思ったから選んだわけでもあるんですね。

そうですね。絶対にインターネットの時代が来ると思っていたので、役に立つなとは思っていました。

専門を変えることは無駄ではない

でもそこから弁護士になるってことは、今まで学んできた専門とは違う分野に進むことじゃないですか。高専で学んだことが無駄になるなとかは思いませんでしたか?

また後でちょっとお話しできたらと思いますけど、自分の専門を変えることは、別に損なことではないと思うんです。

だから無駄だとは思いませんでしたね。

文転するってなると、周りからの反応も気になるところですが…

周りに「もったいない」と言われて、やっぱりやめようと思ったことはありませんでしたか?

周りに反対されることはありませんでしたね。まぁそもそも反対されても関係ないですよね。自分の人生なんだし、自分で考えて動いた方がいいに決まってる。

でも情報系が嫌いになったわけではないじゃないですか。せっかく勉強したんだし、情報系の仕事に就こう!とは考えなかったのですか?

思わなかったです。

そもそも高専に入ったときに、「あっ、情報の世界ってもうすでに天才がいる」と気づいたんですよね。

僕は一家に一台パソコンがあるだけで満足してたのに、同級生の何人かは、パソコンを自作してたり。プログラミングを勉強するときも、ある程度知っている前提で授業が始まったりしたんです。

圧倒的に好きな人が強い世界ですもんね。

今さら頑張っても追いつけないような。

そうです。しかも当時のそういうことが得意な子って、閉じた雰囲気をもっていたんですよ。こっちに入ってくるなら、もっと知ってから来いよ。みたいな。 そういう雰囲気も苦手でした。

そういうこともあって、情報から離れることに抵抗はありませんでした。

「女子も少なかったし…」

僕は機械工学科なのですが、ロボコンの人を見ると「絶対勝てないな」って感じちゃいます。

たぶんそう感じている人、多いですよね?

でも専門を変えるわけにはいかないと思ってる。

実際、専門を変えると今までの勉強が無駄になっちゃうと思いませんか?

専門を極めることはめっちゃかっこいいです。だからみんなそこにあこがれる。でも、専門を変えることは損ではないと気づいてほしいんですよ。

スペシャリストか、ジェネラリストか

専門をきわめて仕事のする人のことをスペシャリスト。そしてその反対、特定の専門を持たず、他分野をまたぐ仕事をする人のことを、ジェネラリストと呼びます。

スペシャリストとジェネラリストですか。

おそらく高専生のほとんどが目指しているのは、スペシャリストですよね。一つの専門分野に、深い知識を持つ人になることが多いと思います。

そうですね。高専の本科では、自分の専門分野の勉強のみをしますし、就職先も自分の専門が活かせるところを選んで就職すると思います。

そこで問題になってくるのが、スペシャリストになりきれなかった人たちです。私もそうですが、情報系のスペシャリストにはなれなかった。

というか、高専出たくらいでスペシャリストなんてほとんどいないんじゃないですかね?一部の超例外を除いて、若干高専のイメージ戦略な気が・・・

さらに弁護士でも、僕なんて全然なんですよ。めちゃくちゃすごい人なんていっぱいいる。 もうすでに弁護士はやめているし。
これは謙遜でもなんでもなくて、単なる事実というか…まあそういうもんです。

でも僕は、その分広い範囲で活動ができると思うんです。

スペシャリストじゃないからこそできる…ですか?

誤解を恐れずに言うと、スペシャリストはあらゆることを自分の専門領域で解決しようとするんですよね。

例えばこれは僕がそうだったからわかるんですが、弁護士は相談事を法律相談として受け取ってしまう。

それでいいような・・・?

いや、仮に法律相談として来たとしても、法律以外の解決のほうがいい場合なんてたっくさんあるんですよ。それこそそもそもビジネスのやり方の問題だったり、人間関係の問題だったりと。

僕は「弁護士とは法律の専門家だから、こうしなければならない」ってすごく思い込んでいて、その思い込みを外すためにも一旦資格を返上して、そこに向き合ってるんですよ。

もちろん、最初からそんなふうに思い込んでいない弁護士さんもたくさんいらっしゃいますけどね。

特定の専門を持たないからこそ、自由に物事に当たれる、と?

おっしゃるとおりです。
ほかにも複数の分野に知識を持つことで、特定の分野を恐れなくなるんです。

例えば僕なら、今IT系の何かの仕事が来ても、多少の知識があるから勉強できる。さらに高専時代の友人もいるから、詳しい人に教えてもらえる。

特定の専門分野を持たないことはめっちゃ強いんですよね。

専門にとらわれない自由な発想ができること、その発想を元に色んな人を巻き込んでいけることそれがジェネラリストの強みです。

「ジェネラリストの価値は非常に高いんです」

だから専門を変えることが、必ずしも無駄にすることにはつながらないということですね。

そうです。不安になる必要はありません。もし別の専門職になったとしても、前の専門知識を活かそうと思えばできますし。

あ、ただ自分が好きだし向いてるなって専門ならフルコミットするのも素晴らしいと思います。専門変えること自体はいつでもできますし。

「いまーここ」を大事に生きること

では最後に、今何かに悩んでいる高専生にアドバイスをください!

一番伝えたいことは、未来も、過去も「いまーここ」をよくするためだけのツールだってことです。

試験に合格しないと人生始まらない。お金持ちにならないと幸せになれない。みたいな考え方は間違っていると思います。

結構みんな、そういう考えにとらわれているのかなと。自分がそうだったというのもありますが、いま自分が目指しているものが、そういった考えにとらわれていないかどうか、もう一度確認してみたらいいこともあるかもしれません。

目標を決めることすらも、今をよくするためのツールだということですか。

そうですね。
その目標に向かって走っている自分が幸せかどうか考えてみて、違うなら別の道を考えるのもいいかもしれませんね。

そのためには広い視野を持たなければいけません。そもそもみんな、情報量が圧倒的に足りていないんですよ。だからみんなSNS始めよう!(笑)

SNSって、Twitterとかでいいんですか?

そうそう。SNSって無駄な情報も多いですけど、触れれば触れるほど情報って集まってきますから。

あとなにか悩みがあるなら、哲学を勉強してみたらいいと思います。たいていの悩みは昔の人も経験しているので、悩みが解決するまでのプロセスとかはそこで学べると思いますよ。

雑誌も受け取っていただきました!

みんなが憧れる「スペシャリスト」になれなくても、専門分野にとらわれないからこそ力を発揮できる「ジェネラリスト」にはなれる。

山田さんのお話から、自分の学ぶ分野を特定せず、自分が学びたいものを学ぶという姿勢が大事なのだと気づかされました。

専門を変えることはリスクもあり、怖いものでもあります。ですが、変えることによる大きなメリットがあることも知っておかなければいけません。

自分がしたいことについて悩んでいる人は、もっと視野を広げて、自由に考えてみてはいかがでしょうか?


取材・執筆:若林拓海
撮影・編集:大久保和樹

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