


※この記事は、「きっかけは国語の教員の一言だった。高専生が大学教員を目指すまで」の後編になります。今記事だけでも読めますが、前回の記事もあわせて読んでいただくと、より面白いと思います。
博士課程に進学したくても、就職率が低いという話を聞いて迷う学生も多いと思います。野村先生の時の博士課程での学位取得率と就職率を聞きました。
「博士課程での私の同期は10人くらいで、そのうち学位を3年間で取ったのが2,3人で、4年間で取ったのが2,3人でした。取れなかったひとも2,3人くらいだったかな。博士課程の中には社会人も多かったです。彼らは修士で就職し、会社から博士課程に派遣されて研究しに来ていました。
博士課程に入った約10人の同期で就職が決まったのは、僕の知っている範囲で6人だったかな。そのうち5人が教員や研究所の研究員でした。 」
また教員からベンチャーを起業する人もいるそうです。そして現在の博士課程からの就職はポスドクなども多いだろうと話していました。
そして大学のポストのしくみについても教えてくれました。
「昔は教授のポストが空くと下の人がそこに上がるというシステムだったんですが、最近はポストが空いても、ある研究分野の人じゃないと応募できないようなところもあります。例えば近年流行っているAIなど。電磁気など既存の分野はそれなりに人を揃えているじゃないですか。大学も新しい分野を教えれる人を探すんだよね。
あと旧帝大とかでけっこう聞くのは、自分の2,3歳年上の教授がいる場合に、自分が教授になれるのって2,3年なんだよね。10歳くらい離れてるとその教授が退職した後に、10年くらいは教授できるんだけど。」
年功序列で教授になることが出来ると思っていたので、そうではない事実に驚きました。ポストが空いていても、研究分野などが合致しなければ教員になれない。そういったところが、博士卒の就職難につながっているのだろうとも感じました。
教員になるための秘訣を伺ったところ、コミュニケーション能力が大事だと答えてくれました。
「コミュニケーション能力がとても大事だよね。学力は本とか読めばつくけど、コミュニケーション能力はそうじゃないからね。今後の社会ではさらに重要になってくるんじゃないのかなあ。教員になるために何かしたってことは無かったね。」
他にも学会での発表が必要だと言います。
「学会発表などにたくさん顔を出してコネクションを作るといいですね。僕も学会などでよく見る学生がいて、今後どうなるのかなって気になりますからね(笑) 学会の懇親会とか、学生の交流会で顔をつなぐのがいいね。
あと研究発表をコンスタントに出し続けるのがいいだろうね。発表するためにはしっかり研究をする必要があるので、学生や院生の皆さんはしっかり研究しましょう。ただ就活とかで忙しくなると研究する時間が実際なくなるから、出来るうちに研究するのが大事だね。」
そして研究を学会で発表するとメーカーとも繋がれるそうです。
「そこで自分の研究を製品として世に出せるかもしれないし。大学だと、製品として研究成果を出すことが難しいからね。」
教員というのは研究も勿論ですが、講義や学生を持つ立場なのでコミュニケーション能力は大切なようです。
長く研究をされている野村先生が思う、高専生がすべきこととは、
「若いときに、海外だけとは言わないけど、違う文化に触れるのはすごい大事だと思うね。それでまた違う自分が見えてくるんじゃないかな。積極的になんかに関わって欲しい。
教員とかはお金はあっても行く時間がないので、学生のうちに海外に行って欲しい。 恥をかいてもなんとか帰ってきたら、それはそれでいい財産(体験)になるしね(笑) 」
とてもフランクに話してくださった野村先生。運も必要だそうですが、その運を得るためにはコミュニケーション能力も大切かもしれません。
なかなか知る機会のないリアルな博士課程の就職の話。そして大学教員のなり方や、内部事情など貴重な話だと思います。どんな仕事でもコミュニケーション能力が問われるようです。みなさんもコミュニケーション能力を高専の間に伸ばしてみてはどうでしょうか。
取材・執筆:加藤桃子
編集:若林拓海
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