


【最終回】高専からアメリカの大学に編入した話。

長岡高専生が作る新しい就活の形。オンラインインターンコンテストとは??

とも(関西の某高専機械工学科出身)
ネットが発達し、情報過多な現代では、常に悩み、自分の選択に後悔をしながら生きている人も多いと思います。そんな人こそ、何かを押し付けられたり、価値観を強要されたりするのは嫌かもしれません。「勝手に高専ラジオ」メインパーソナリティーのともさんもその一人。そんなともさんが作り出す空間だからこそ、何だか居心地の良いものになるのかもしれません。今回は、ともさんの歩んできた道からどのように「勝手に高専ラジオ」が生まれたのかを伺いました。
全国47都道府県の中で、5県は高専がありません。そのうちの一つである滋賀県出身のともさんは、県内ではほとんどいない高専進学を選択しました。
「人と同じ道を選択するのが嫌でした。その理由がどこから来るのかはわかりませんが、そのような想いを持ち、高専に進学したという決断は誇らしく思っています。」
お兄さんの高校受験資料に紛れていた高専の資料を目にし、突飛な学校があること知ったともさん。そして無事、関西の某高専機械工学科への入学を果たします。
高専1~3年生は野球にのめり込みながらも赤点は回避するという日々を送っていました。4年生以降はいっそう真面目に授業に取り組み、席次もぐんぐん上昇。そして本科修了後は同高専の専攻科へと進学します。野球以外にも、高専祭実行委員、憧れた寮生活など、高専を存分に楽しんでいました。
現在ともさんはこれまで学んできた機械系ではなく、都市計画という全く別の研究分野に挑戦し、模索を続けています。
「機械系を専門に7年間続けてきましたが、このままこの分野を研究するのかどうかモヤモヤ悩んでいました。実習などは楽しかったのですが、そこまでのめり込んでいるという感覚もなかったです。そこで思い切って分野を変えてみました。」
大学院から分野を変えるというのは相当大変そうな印象があります。実際、大学院に進んでからどうだったのでしょうか。
「かなりしんどいです(笑)。まず、背景となるようなデータを集めるところから研究が始まり、頭の使い方もこれまでの研究とはかなり違います。正直、機械系の分野が名残惜しい感覚もちょっとあります。ただここを乗り越えれば新しい世界が見える気もします。」
ともさんのように「ずっと同じ分野で研究をやり続けるのか」という悩みは、誰しもが抱えているのかもしれません。特に、自分のやりたいことは何なのかを常に考えてしまう真面目な人ほど、そのように深く考え込んでしまうものなのかもしれません。
ただ、このようにモヤモヤしてしまった時、たまに新たな行動につながることがあります。そう、ともさんの場合、「勝手に高専ラジオ」です。舞台は専攻科時代のともさんのモヤモヤに遡ります。
ともさんの進路の悩みは、専攻科に入る時から、大学院に入るまで、長く長く続いていました。そんな悩みの中で始めた取り組みが「勝手に高専ラジオ」でした。
「本当は本科修了後は大学に編入しようと思っていました。席次がそこそこ良かったこともあり、うぬぼれもあったのでしょうか、残念ながら志望大学には行くことができませんでした。失意の中そのまま専攻科に進み、同じ環境での日々が続く中で大学院入試の時期を迎え、モヤモヤの中半分ヤケクソで始めたのがこのラジオです。」
壮大な目標があるわけではなくヤケクソで始めたラジオ。それでも、ラジオのテーマは”高専”でした。
「さすがに7年間も高専にいたので、”高専”を名乗っても問題ないだろうと(笑)。特に、たくさんの仲間と過ごした本科の5年間は本当に楽しかったので、その日々を再上映するような感覚です。」
当初はともさんの仲間内だけで始めたラジオでしたが、予期せぬことに様々な方面へと拡がりを見せています。
「”高専”というキーワードだけで、人のつながりが広がったと感じています。これまでの生活では出会えないような人たちばかりです。これは普通の大学生ではできないことかもしれませんね。」
勝手に高専ラジオの中で主に話題になっていることは、決して高専生のキャリア感などを強く主張するものではありません。日々の悩み、高専あるあるなどをほんわかと語っていきます。それでも多くの人々が集まってくるところから、コンテンツとしての素晴らしさや、ともさんの優しい性格が汲み取れます。
今後、勝手に高専ラジオはどのようになっていくのでしょうか。その答えは「何も変えない」ということでした。
「単純に今のままで面白いなーと思ってくれるリスナーが増えてくれると嬉しいです。素のままの高専出身者の情報発信を楽しむ、それだけでいいと思います。」
この姿勢には、ともさんの想いが非常に強く表れているように感じます。
「人々の歴史を聞くのが好きなんです。ただ、僕は頑固な性格なので、それを自分自身の人生の糧にしようというわけではないのですが…。」
ゆっくりとともさんは続ける。
「ただ、一人一人に想いがあって、個性があって、それが繋がるようなコミュニティは面白いと思います。それはまさに高専そのものであって、変に考えを束縛せずに、各々が自由に生きている学校こそ高専だと思います。そんな優しい世界が好きです。」
高専といえば、高い技術力や、即戦力の育成など、学生側からすればなんとなく息苦しく感じてしまうキャッチフレーズがつけられています。しかし、中にいる高専生たちを見てみれば、楽しく生活している学生が多いですし、何よりも高専出身者たちの多くが「何だか高専時代はよかった」と口を揃えて言います。
「優しい世界が好き」という想いの裏には、高専に脈々と流れる、互いの自由を圧迫しない文化があるのかもしれません。「勝手に高専ラジオ」は高専の居心地の良さをそれとなく教えてくれています。
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インタビュー・記事執筆: 鈴木
サムネ画像提供: Nyakamura(@OblivionMGD)
編集: 若林・大久保