


【最終回】高専からアメリカの大学に編入した話。

長岡高専生が作る新しい就活の形。オンラインインターンコンテストとは??

「高専から進学する」といえば、自分の専門領域と同じところに進学することが普通です。しかしやりたいことが別の分野に生まれたとき、どのように進路を決めればいいのでしょうか?
高専で勉強したことにとらわれずに、工学部の経営プログラムに進学をした小比田さん。その決断の理由と、内に秘めた思いについて伺いました。
合同会社コヒテック CEO
小比田 陸(こひだ りく)
1998年生。神奈川県生まれ、静岡県育ち。
国立沼津工業高等専門学校卒業後、新潟大学工学部工学科協創経営プログラムへ編入学。 高専卒業を目前にして起業を決意。令和元年6月合同会社「コヒテック」を設立、CEOに就任。
ー高専に進学したきっかけは何でしたか?
恥ずかしいんですけど、家から一番近かったからですね(笑)。正直近くに無ければ知らなかったと思います。
もともと大学進学をするつもりはなかったので、就職率が高いことが魅力的でした。
―では工学とか電気とかにあんまり興味はなかったのですか?
最初は興味ありありでしたよ。高専の学科を選ぶとき、ロボットすごいなぁ、やりたいなぁって思って電子制御工学科を選びましたし。
ーもともと就職希望だった進路を、進学に切り替えたのはなぜですか?
きっかけはアホなんですけど、ネットに高専卒は稼げない、昇進できないって書いてあるのを見て萎えてしまって。それで大学を考え始めて、調べたり、先輩の話を聞いたりしているうちにめっちゃ大学に行きたくなって、切り替えました。
今考えれば高専卒でもできる人はできるし、大学出てもできない人はできないので、稼げる稼げないとか関係ないってわかりますけどね。
―進学に切り替えたのはいつ頃でしたか?
大学行きたいと思ったのは1年生の時ですね。進学先を具体的に決めたのは遅くて、5年生の春頃でした。
―進学先の決め手はなんでしたか?
「工学」と「マネジメント」を同時に学ぶプログラムがあるというところです。
ーマネジメントですか?どうして工学ではなくマネジメントを学ぼうと思ったのですか?
きっかけは、高専4年生の時の小型自律走行ロボットの開発をチームで行う授業でした。8人くらいのグループで1年間かけて「ロボットのある生活」をテーマに、僕らのチームは盲導犬の代わりに視覚に障がいのある人の歩行を補助するロボット開発をしました。
8人のなかでもそれぞれ役割分担がされているんですが、そこで僕はプロジェクトマネージャーをやったんですよ。でも僕、この仕事を全然うまくできなくて。1年かけて発想を形にするため、完成までの長期的な視点と中間報告会までの短期的な視点の管理が重要でした。特に僕は長期的な視点でのスケジュール管理が苦手で…(笑)
でもプロジェクトマネージャーの管理能力が高い他の班は計画的で、日程の管理とかがきちんとできていてロボット開発が順調に進んでいたんです。 そこで、マネジメントができるとできないとの差が大きいと気づき、僕もできるようになりたい!工学の技術を生かすにもマネジメントの能力が必要だ!と思って、そういう分野に興味を持ちました。
あと僕は学生会の会長をしていたこともあって、プロジェクトを動かすことにはもともと興味があったのかもしれませんね。
―今まで触れてこなかったマネジメントの分野に進むことに戸惑いはありませんでしたか?
全く無かったですね!やりたいって思ったことを学べるから楽しみでした。今とっても楽しいですよ、大学!
―周りの友達や先生方からは進学先について何か言われましたか?
友達からは「工学から逃げるっていう理由じゃなくて、そういうのがやりたいならいいんじゃね~」みたいな反応をされましたね。
先生からは、編入先が工学部だったこともあって普通の進学をする人に対するものと同じ感じだったと思います。僕が口下手なので先生を困らせてしまいましたけど。反対とかはなかったですね。 小比田が社長になったらおもしろいねなんて先生に言われたりもしました。人生っておもしろいもんですね。その後まさか会社を作ることになるとは…(笑)
―ついこの前に起業されていますが、いつから起業を考え始めましたか?
高専卒業のほんと直前でしたね。仲間が進学や就職でバラバラになってしまう前に始めないと、と思いました。
―起業することになったきっかけはなんですか?
僕は、田舎の落ち着いた感じというか、生き急がない感じ、ゆっくりした感じが好きなんです。そんな田舎が「仕事が無い、情報が遅れている」という理由で若者が流出し、衰退してしまうのはもったいないと思いました。この課題に対して、場所によらず活用できるITの技術で地方を活性化できるのではと思いました。これがコヒテックを始めるきっかけでした。
あと、僕が会社を経営していく上で必要となるマネジメントの勉強ができる環境への進学が決まったことも大きなきっかけになりましたね。
―コヒテックの目指すビジョンはどのようなものですか?
人と人のつながりをつくる手助けや地方創生に貢献ができたらいいなと思っています。
まだまだ成果は出せていませんが、いつか僕らの働く姿を通して、地方で何かしようとする人に地方で頑張っている姿で勇気を与えられたらと思っています。
あとは就職と進学という2つの選択肢ばかり教えられる高専で企業説明会をして学生で起業するという選択肢もあることを伝えられたらいいですね。
―コヒテックでは今どんなことをしているんですか?
現在はHP制作を主に行っています。例えば地方の飲食店だとグルメサイトに掲載されていても、独自のHPは無いという場合がよくあります。HPがあるとお店の魅力がよく伝わり、信頼度も上がります。些細ですが働く人もお客さんにもこういった僕らの持つ技術で幸せをつくりだせるのかなと思っています。
今後はアプリ開発や、HPを利用したデータ解析とWebを用いた経営戦略の提案などを行ってよりITと暮らしの距離を縮めていきたいと考えています。
―コヒテックの特徴はどんなところですか?
一番大きい特徴は、ディレクター、営業、デザイナー、エンジニア全員が高専を卒業し、技術を理解していることですね。また、働いている人はほとんど同世代なので上下関係に縛られない自由な意見の交換ができています。不思議なことに高専出身っていうだけで他の高専の卒業生とでも絆を感じます。分母が少ないからこそだと思いますね。
あとは、若くてエネルギーがあることがコヒテックを支えていると思います。みんな勉強意欲があって成長速度が速い。ほんとすごい。
―最後に高専生・高専を目指すひとへメッセージをください!
高専低学年の頃は高専に入ったことは間違いだったと言う人は周りにたくさんいました。しかし卒業するときにはみんな高専はよかったと言っていました。
自分の専攻と関係があってもなくても、少しでも興味がある分野を見つけたらそこを中心にアンテナを高く持ち、能動的な行動をとることが成長につながると思います。今、高専マガジンを読んでいる皆さんは十分アンテナを高く持てていると思いますけど。
興味のある分野を突き詰めた結果として僕の周りでは情報系の勉強をしていた人が建築、機械系の勉強をしていた人が文系に学ぶ分野を変えて編入したひともいます。また、高専をやめ専門学校に進学し、180°違う道を歩んでいる同級生もいます。やりたいことのために高専という環境が適していないならば高専を辞めるのも1つの進路だと思います。
5年間もあれば社会も変わるし、自身の考え方も変化していきます。結局は得られたことをいかに生かしていけるかだと思います。
でも忘れちゃいけないのは自分が何をしたいのか。何をすれば頑張れるのか、どんなことをしているのが楽しいのか。しっかりと自分の頭で考えて答えを出すと良いと思います。僕は起業が最適解だと思っていますがみなさん人それぞれだと思います。思いっきり失敗して、それでも楽しいって思えることを見つけてください。
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今回取材を受けてくださった小比田さんのTwitterはこちら、小比田さんがCEOを務めるコヒテックのHPはこちらからどうぞ!
取材・執筆:内藤祐里菜
編集:若林拓海